メソポタミア神話は、暗く不穏な物語で満ちています。
残忍な神々、恐ろしい怪物など、不吉な人物が登場するのです。
しかし、神話には明るい面もあり、それはしばしば愛を中心に展開されます。
メソポタミアの偉大な神々が、他の神々と恋に落ちる話はたくさんあります。
幸いなことに、これらの物語のいくつかは、古代の書記や学者によって記録されています。
その一つが、ネルガル(戦いの神)とエレシュキガル(冥界の女神)の異常な恋愛を扱った神話なのです。
意外なことに、この神話は、この二人の神々が悲劇に終わらない数少ないラブストーリーの一つです。
ネルガルとは?
ネルガルはメソポタミア神話における戦争や死、疫病、冥界の神です。
一方、ある面では太陽神の側面を持ちます。
そのため、しばしばシャマシュと同一視されています。
正午や夏至の太陽が人類にもたらす災禍を表している
と考えられていました。
なぜなら、メソポタミアの人々にとって、夏の盛りは死をもたらす季節だったからです。
ネルガルの両親をまとめると以下のようになります。
- 父:大気や嵐、秩序の神エンリル
- 母:穀物の女神ニンリル
エンリルがニンリルを強姦した時、ニンリルは月の神となるシンを身篭りました。
エンリルは最高神であったにも関わらず、
若い処女を犯してはいけない
という神々の掟を破り、冥界へ追放されたのです。
ちょっと、私の子宮には月の神が宿ってるのよ。このままではこの子が冥界に連れていかれてしまう…
とニンリルは冥界までエンリルを追いかけました。
その後エンリルはニンリルを2度騙して、3神を受胎させました。
そのうちの一柱がネルガルだったのです。
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エレシュキガルとは?
エレシュキガルは、死や病気と密接に関連する冥界の女神です。
エレシュキガルはイナンナ(愛と豊穣と戦争の女神)の姉かつライバルであると信じられていました。
また、ネルガル(戦争と農業の神)の妻でもあります。
前述のように、エレシュキガルは冥界を支配し、死者を裁き、冥界での居場所を決める役割を担っていると考えられていました。
また、人間を死に至らしめる病気も彼女の仕業であると考えられていました。
興味深いことに、エレシュキガルによって引き起こされたと考えられている病気は、メソポタミア人の基準では不治の病であることが多かったのです。
そんなエレシュキガルについてさらに詳しく知りたい方は、
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最悪な初対面?!
当初こそ、エレシュキガルとの間にトラブルを起こすも、大恋愛の末に、彼女を妻とし、ネルガルは冥界の王となりました。
神々が宴の準備をしていたある時。
エレシュキガルは宰相ナムタルを天界に遣わしました。
ナムタルを迎えた神々の中で、ネルガルだけが彼に敬意を示さなかったのです。
何て無礼な奴なの、ネルガルって男は…!!
とエレシュキガルは激怒します。
そして、ネルガルを冥界に連れてくるよう命じ、殺そうとするのです。
しかし、二人は恋に落ちてしまうのです。
二人の恋のきっかけ
二人の恋のきっかけは色々と諸説あります。
- エレシュキガルの沐浴する姿を見たネルガルがその魅力に屈した
- ネルガルにエレシュキガルが心を奪われた
- ネルガルがエレシュキガルを暴力で屈服させた
このように言われています。
ネルガルが冥界へ訪れた7日目の朝、彼は地上に帰ってしまうのです。
それを嘆き悲しんだエレシュキガルはこう言います。
ネルガルを返してくれなければ、死者たちを地上へ上がらせて、生者を喰わせ、死者を生者より多くする…!!
このように神々を脅迫し、最終的にはネルガルを冥界に留めさせたのでした。