夏(か)は、中国の歴史書に記された約471年間続いた中国最古の王朝なのですが、現在の歴史の教科書では正式な国としてまだちゃんと認められていません。

夏とか、伝説の王朝でしょ
と元々考えられていたのですが、考古学資料の発掘により実在の可能性が出て来たのです。その発掘では、後から力を伸ばした殷(いん)が、どこかの文化を継承した形跡が見られました。

もしかして、これが、夏王朝なんじゃ…?
と考古学的には考えられています。

文字の資料もないので、王朝としての性格を持っていたのかも謎ですけどね。
そんな夏王朝について、古代中国の歴史書に記されている歴史を見て行きましょう!
禹が夏を作ってみた
夏の創始者は、禹(う)と言われています。この時の中国は、中国神話に登場する堯舜(ぎょうしゅん)の時代と言わ呼ばれていました。帝の堯(ぎょう)の時代に、

息子よ、俺の失敗した川工事を何とかしてくれ…!!
という形で、禹の父の後継ぎとなりました。帝の舜(しゅん)に推薦され、中国の黄河と呼ばれる川の工事に務めました。

俺、親父より才能あったんだ
と禹は父よりも何と仕事の才能を発揮します。そして、その功績を高く評価されるのです。

ふむ、禹は仕事も出来るし人望もある。あいつを後継者にしても良いのぅ
と帝の舜は考えていました。しかし、舜が亡くなった後、禹は舜の子供を帝にしようとします。それに対して、周りの臣下たちが

いやー、その子は無理でしょーー!禹様が帝になるべきでしょーーー!
と反対します。そうして、禹が次の帝となるのです。
禹が素晴らし過ぎた
禹が即位してからしばらくの間、

武器の生産や宮殿の増築を取りやめよう。農民を苦しませてはならぬ。それから、ややこしい制度は廃止して行政を簡略化させるのだ。税の負担を軽くする代わりに、地方都市を建設しよう。
といった事を実行していきました。禹が信頼できる君主であると多くの人がおもったために、当時の外交制度であった朝貢(ちょうこう)を求める者たちが、中国の国内外で多くなりました。朝貢とは、朝廷にみつぎものを差し上げることです。
さらに、禹は河川を整備して周辺の土地を耕しました。そして、草木を育てたのです。また、方角の違いを旗によって人々に示し、中国全土を九州に分けました。

45年間、節約をモットーに帝を務めました
そんな「禹」という文字の起源は、黄河に棲む水神だったと言われています。この神話により、禹や夏の人達は

海の民族だったのでは?
とも考えられています。
最初の世襲王朝
禹が亡くなった後、禹の子供であった啓(けい)が帝になりました。これが、中国史上初めての世襲とされています。
啓が亡くなった後は、啓の子供であった太康(たいこう)が後を継ぎます。この時代について、中国の歴史書では

国を失った
と表現されているそうです。それほどまでにひどかった逸話があります。太康には5人の弟がおり、その弟たちが

あのくそ兄貴、また帰って来やがらないぜ…!!
といった内容を歌として残しています。なんとその兄である太康は遊び歩き、政治活動を行わなかったのです。そのため、国を追放されたと考えられています。
この次に帝となったのが、太康の弟の一人であった中康(ちゅうこう)です。これ以降の帝については、記録も乏しく特に何も伝えられていません。
夏の衰退と滅亡
夏王朝が滅亡に近付くにつれて、帝の行いも悪くなって行き、人々の心も離れて行きました。そして、最後の帝である桀(けつ)の時代には、人々を武力で押さえ付け人徳に欠けた行いをしました。
また、殷(商)の王であった天乙(てんいつ)を呼び出し投獄しています。この行いにより、桀は夏王朝滅亡のきっかけを作ったとも言えます。
天乙はその後に解放されます。彼は人徳があったので、周りに臣下が集まり、ついには桀を倒してしまうのです。
この桀に関する伝説は、殷の最後の帝であった紂王(ちゅうおう)の最期とすごく似ています。なので、この桀の話は

伝説なんじゃない?
とも言われています。
最近の考古学調査では、地球規模の気候変動により桀が王であった期間も天候不順があったとされています。
さらに、夏の遺跡からは殷による激しい破壊と虐殺の跡がありました。例えば、宮殿以外は全て破壊され、多くの人骨の手足は刃物で切断されたり、顔が陥没していたりなどしたそうです。

他には、破損した夏人の人骨と共に殷の青銅武器も出土したそうです。
このようなことから、殷が武力により夏に取って代わったことが分かります。
そんな、殷についての歴史をさらに詳しく知りたい方は、
殷の歴史とは?中国最古の王朝成立から滅亡までの5つの流れ
中国文明について歴史の教科書で最初に出てくるのが「殷(いん)」でしょう。ここでは、授業ではざっと飛ばしがちな殷の歴史について詳しく書いています。
こちらの記事も併せてお読み下さいませ。
参考:夏 (三代)