『ラーマーヤナ』のあらすじ(内容)を分かり易く解説!

ラーマーヤナ

ラーマーヤナは古代インドの大長編叙事詩です。

ヒンドゥー教の聖典の一つであり、『マハーバーラタ』と並ぶインド2大叙事詩の一つです。

この記事では『ラーマーヤナ』を分かりやすくざっくりあらすじ(内容)を紹介していきたいと思います。

ラーマーヤナとは?

サンスクリット語で書かれていて、全7巻です。

総行数は聖書と並ぶほどで48,000行あります。

出来上がったのは紀元3世紀頃で、詩人ヴァールミーキが、ヒンドゥー教の神話と古代英雄コーサラ国ラーマ王子の伝説を編集したものとされています。

※コーサラ国とは、紀元前6世紀頃から紀元前5世紀頃にかけて古代インドにて大国と言われていた十六大国のうちの1つである。

ラーマーヤナでは、ラーマ王子が誘拐された妻シーターを奪還すべく大軍を率いて、ラークシャサの王ラーヴァナに挑む姿を描いています。

※ラークシャサとは仏教で羅刹(らせつ)と言われる鬼神の総称である。破壊と滅亡を支配する神。また、ラーヴァナ(ラーワナ)とは、インド神話における鬼神の王である。10の頭、20の腕と銅色の目、月のように輝く歯と山のような巨体を持つ。

現代でもラーマーヤナは、

  • 絵画
  • 彫刻
  • 建築
  • 音楽
  • 舞踏
  • 演劇
  • 映画

など多くの分野でインドだけではなく、当時同じサンスクリット圏であり古くからインド文化を取り入れてきた東南アジアで深く浸透し影響力を持っています。

特に、古代インドからもたらされた王権を強調する王権思想は支配階級のみならず、民衆の間でも広く親しまれています。

第1巻 バーラ・カーンダ(少年の巻)

子供のいないコーサラ国のダシャラタ王は盛大な馬祀祭(うまめし)を催し、王子誕生を願います。

ダシャラタ王は約350人の妻がいましたが、特にお気に入りの3人の妻から王子が誕生しました。

以下の4兄弟(王子たち)はラークシャサの王ラーヴァナを倒すために生まれたヴィシュヌ神の4分身となります。

  • カウサリヤー妃:ラーマ王子
  • カイケーイ妃:バラタ王子
  • スミトラー妃:ラクシュマナ王子、シャトルグナ王子

※ヴィシュヌ神とはヒンドゥー教の神である。特にヴィシュヌ派では最高神として信仰を集める。様々な化身(アヴァターラ)を使い分け、地上に現れるとされている。

成長したラーマ王子はリシ(聖賢)と呼ばれる聖者のお供をしてミティラー王国のジャナカ王を訪問しました。

この時、ラーマ王子はジャナカ王の娘シーターと出会い結婚しました。

第2巻 アヨーディヤ・カーンダ(アヨーディヤの巻)

カイケーイ妃にはマンタラーという侍女がいました。

マンタラーはもともとは孤児でしたが、少女のころからカイケーイ妃に養育されました。

彼女はカイケーイ妃と妃の息子のバラタ王子にラーマ王子が害をもたらす存在と盲信させられていたのです。

ラーマ王子の即位が決まった時、

ヒジャブ女子画像

ラーマ王子を追放し代わりに、バラタ王子を王位につけるようにダシャラタ王に願ってくだい

とマンタラーはカイケーイ妃にアドバイスしました。

実は、ダシャラタ王はカイケーイー妃にどんな願いでも2つまで叶えることを約束したことがありました。

ラーマ王子はこの願いを快く受け入れ、妻のシーターとスミトラー妃の息子であるラクシュマナ王子と一緒に王宮を出ました。

しかし、ダシャラタ王はこの出来事に対して悲しみのあまり絶命してしまいます。

第3巻 アラニヤ・カーンダ(森林の巻)

王宮を出たラーマ王子はダンダカの森に行きます。

そして、鳥王ジャターユと友達になりました。

ジャターユは妻シーターを守ることを約束します。

ラーマ王子は森を徘徊していた時に、

女性の後ろ姿画像

一目惚れしたから結婚してほしい

と鬼神のシュールパナカーから迫られました。

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自分は結婚しているからラクシュマナ王子と結婚するのが良い

とラーマ王子はこのようにふざけて勧めます。

そして、シュールパナカーがラクシュマナ王子に結婚を迫まります。

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自分はラーマに仕える身であるから自分と結婚すると下女になってしまうので、やはりラーマと結婚すべきだ

とラクシュマナ王子もふざけてこう言いました。

しかし、シュールパナカーはこれを冗談と受け取りませんでした。

怒ってラーマ王子の妻シーターを喰い殺そうと飛びかかります。

残念ながらラーマ王子に取り押さえられ、ラクシュマナ王子に鼻と耳を切り落とされてしまいました。

シュールパナカーはこの出来事を恨み、

女性の後ろ姿画像

シーターを殺してほしい!

とラークシャサ(鬼神)の王ラーヴァナにそうお願いします。

この時シュールパナカーは、

女性の後ろ姿画像

シーターはとても美しいので、ラーヴァナにふさわしいと思ってさらおうとしたがラーマとラクシュマナに邪魔をされて、鼻と耳を切り落とされてしまった

と嘘をついています。

そこで、鬼神の王ラーヴァナは鬼神のマーリーチャに美しい黄金色の鹿に化けさせ、シーターの周りで飛び跳ねさせます。

その結果、シーターはすぐに鹿の美しさに魅せられ、

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鹿を捕らえて!

とラーマ王子とラクシュマナ王子にそうお願いします。

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この鹿は悪魔が化けているのではないか?

とラクシュマナ王子は疑います。

ラーマ王子はラクシュマナ王子をシーターのもとに残し、1人で鹿を追跡することにしました。

鹿に化けたマーリーチャは上手く逃げラーマを疲れさせることに成功しました。

しかし、マーリーチャは捕らえることを諦めたラーマによって射殺されてしまうのです。

鬼神マーリーチャは死の間際に正体を現し、

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シーター!ラクシュマナ!

とラーマ王子の声色を真似て名を叫びました。

この声を聞いたシーターはラクシュマナ王子に懇願してラーマ王子を助けに向かいましたが、鬼神の王ラーヴァナはその隙をついてシーターをさらってしまいました。

鬼神の王ラーヴァナがシーターをさらおうとした時、友人の鳥王のジャターユは約束通りシーターを守ろうと努めます。

鳥王ジャターユは鬼神の王ラーヴァナに襲いかかりましたが、ラーヴァナは弓矢で応戦してきます。

ジャターユは降り注ぐ矢をはじき返し、さらにラーヴァナの黄金の戦車を破壊します。

しかし、鳥王ジャターユが老齢のためにすぐに疲れているのを見てラーヴァナは飛び去ろうとします。

ジャターユはラーヴァナを追いかけてその背中に傷を負わせ、さらに10の腕を食いちぎることに成功したのです。

残念ながらラーヴァナの腕はすぐに再生してしまい、剣でジャターユの翼を切り裂きました。

その結果、ジャターユは地面に落下して瀕死となってしまいます。

戻ってきたラーマ王子はジャターユが妻シーターを食い殺したと疑い、瀕死のジャターユに対して弓矢を構えました。

シーターがさらわれたことをジャターユは告げると、ラーマ王子は弓矢を捨ててジャターユを抱き上げました。

しかし、ジャターユは犯人の名前を告げることなく王子の腕の中で死んでしまうのでした。

第4巻 キシュキンダー・カーンダ(キシュキンダーの巻)

ラーマ王子はさらわれたシーターを探している途中に、ヴァナラ族のスグリーヴァ王と友人になります。

※ヴァナラ族とは猿のような姿の種族のこと。スグリーヴァはヴァナラ族の王。

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シーターを探していてスグリーヴァの援助を求めてやってきた

とラーマ王子は言います。

そして、以下の事をスグリーヴァと約束するのです。

  • ラーマ王子は猿族の王スグリーヴァの兄のヴァーリンを倒すこと
  • 猿族の王スグリーヴァの約束が果たされた時はシーターを取り戻すために尽力すること

彼らはキシュキンダー(ヴァナラ族の都)に向かい、ラーマ王子は近くに潜み、猿族の王スグリーヴァは兄のヴァーリンに戦いを挑みました。

猿族の王スグリーヴァは兄ヴァーリンに敗北してしまいますが、ラーマ王子の放った矢がなんとヴァーリンを射殺することに成功しました。

こうしてスグリーヴァは妃と王国を取り戻すことに成功します。

スグリーヴァはラーマ王子との約束を果たす為に、各地の猿を召集し全世界に妻シーターの捜索隊を派遣します。

南に向かったアンガダ(ヴァナラ族の王子)とハヌマーン(猿神)の1隊は、巨大な鳥の王サムパーティからシーターの居場所が南海中のランカー島であることを教えてもらいます。

※サムパーティとは巨大な鳥の王である。天空の神インドラを鳥王ジャターユと征服しようとしたが、太陽に近づきすぎて弱ってしまった鳥王ジャターユを翼でかばった為に翼が燃えてしまい落下してしまった。サムパーティは死を覚悟していたが、聖者からラーマ王子の使いが来た時に翼が再生し力が回復されると言われていた。実際に翼は予言通り蘇っている。

そして、ラーマ王子は猿の軍勢を率いてランカー島に向かいます。

第5巻 スンダラ・カーンダ(美の巻)

風神の子であるハヌマーンは、海岸から跳躍してランカー島に渡りシーターを発見します。

ハヌマーンは自分がラーマの使者である証を見せ、

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ラーマが猿の軍勢を率いて救出にやってくるであろう

と伝えました。

しかし、ハヌマーンは鬼神たちに発見され鬼神のインドラジットに捕らえられてしまいます。

インドラジットは魔術が得意で、自分の姿を敵の目から隠すことや蛇神ナーガの縄を投げつけて相手の手足を縛って動きを封じることが出来ました。

そんなインドラジットの束縛をハヌマーンは自ら解き、ランカーの都市を炎上させて帰還しました。

第6巻 ユッダ・カーンダ(戦争の巻)

ランカー島ではヴィビーシャナ(心正しい鬼神)がシーターを返還するよう説得しましたが、聞き入れられませんでした。

その為、鬼神ヴィビーシャナはラーマ王子軍に降参し兄のラーヴァナの軍と戦うことにしました。

そして、ラーマ王子とラーヴァナとの間に大戦争が起きます。

鬼神のインドラジットはまず猿族のアンガダ(ヴァナラ族の王子)と戦いました。

初日の戦闘はラークシャサ軍(鬼軍)の敗北であり、鬼神のインドラジットは猿族のアンガダに二度も戦車を破壊されてしまいました。

怒った鬼神のインドラジットは姿を消し、ナーガの縄を投げつけて猿軍の動きを止めつつ、矢を放ち猿軍を傷つけました。

ラーマ王子とラクシュマナ王子も身動きがとれず、一方的に矢傷を負わされてしまいます。

鬼神のインドラジットが去った後も、ナーガの縄に締めつけられて苦しんでしまうのです。

そんな状況でしたが、ガルダ(炎のように光輝き熱を発する神鳥)が現れナーガの縄を追い払って貰うことで解放されることが出来ました。

次に鬼神インドラジットが戦闘に出たのは、有力な鬼神のクンバカルナが戦死した時です。

※鬼神クンバカルナはランカー島で最も体が大きく山ほどもあったという。彼の息は強風のように強く、怒ると火を吐く。空腹になると生き物を手当たり次第に食べるため、6か月に1日しか目を覚まさない呪いをかけられている。この大戦争の時は無理やり目を覚めさせられ参戦している。

鬼神のインドラジットはニクムビラの森で犠牲祭を行い、勝利の兆しが現れるのを見て出陣しました。

一方、猿軍は地に伏してブラフマーの加護を祈りながら、鬼神インドラジットの攻撃がやむのを待つしか出来ませんでした。

※ブラフマーとはヒンドゥー教の創造神である。宇宙と様々な生物の創造主であると語られる。

このような鬼神インドラジットの攻撃で、猿軍の戦死者は67億人にも達したとされています。

猿軍の状況を見た鬼神インドラジットは意気揚々とランカー島に帰還したのです。

実は、ハヌマーンが猿軍が傷つくたびに遠方より霊薬(れいやく)を運んで使用していたので、生きていた者はすぐに回復していました。

猿軍の攻撃によってランカー島が炎上すると、鬼神インドラジットはシーターの幻を作りハヌマーンの目の前で幻を切り裂きます。

ハヌマーンは戦争の目的を失ったと思って退却せざるを得ませんでした。

ハヌマーンがラーマ王子にシーターの死を報告している間、鬼神インドラジットは再びニクムビラの森に赴いて犠牲祭を行いました。

しかし、ヴィビーシャナ(心正しい鬼神)はハヌマーンの報告を聞いて、鬼神インドラジットの策略であることを見抜きます。

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ニクムビラの森を攻めて!

とみんなを説得しました。

そこでラクシュマナ王子は仲間を率いてニクムビラの森に急行し、ラークシャサ軍(鬼軍)を圧倒することが出来ました。

その結果、インドラジットは祭祀を終えないまま出陣することになってしまいます。

さらに、ハヌマーンやラクシュマナ王子は鬼神インドラジットを挑発して姿を消さずに戦うように仕向けます。

この時、神々がラクシュマナ王子に味方をします。

神々はアスラ(インドにおいて神々と対立する存在)を滅ぼす際に用いられた矢をラクシュマナ王子に与えます。その矢によって鬼神インドラジットを倒すことに成功しました。

鬼神インドラジットが倒された後、鬼神の王ラーヴァナもラーマ王子によって討たれています。

ラーマ王子は妻シーターと一緒ににアヨーディヤに帰還しました。

第7巻 ウッタラ・カーンダ(後の巻)

ラーマの即位後、人々の間では鬼神の王ラーヴァナに捕らわれていた妻シーターの貞潔(ていけつ)についての疑いが噂されます。

それを知ったラーマは苦しんで、シーターを王宮より追放してしまいます。

シーターは聖者のもとで暮すこととなり、そこでラーマの血を受け継いだ双子の息子を生みます。

後にラーマはシーター自身の貞潔の証明を申し入れました。

シーターは大地に向かって訴え、貞潔ならば大地が自分を受け入れるよう願いました。

すると大地が割れて女神が現れシーターの貞潔を認め、シーターは大地の中に消えていったのです。

ラーマは嘆き悲しみ新しい妃を迎えることなく世を去りました。


参考:『ラーマーヤナ』・『十六大国』・『Dasharatha』・『マンタラー』・『ラーヴァナ』・『ジャターユ』・『シュールパナカー』・『マーリーチャ』・『ヴァナラ』・『スグリーヴァ』・『ハヌマーン』・『インドラジット』・『ヴィビーシャナ

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