ヨブ記とは?酷い内容と言われるあらすじを分かり易く解説!

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旧約聖書の『ヨブ記』は人間社会においての神の裁きやその苦難を描いています。

何も悪いことをしていないのに苦しまなければならない

というテーマを扱った書として有名です。

内容はほとんどが人と人との問答であり、かなり分かりにくいところが多い書物でもあります。

そんな『ヨブ記』とは一体どんなお話なのでしょうか?

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そもそも『ヨブ記』とは?

『ヨブ記』とは、旧約聖書に収められているヘブライ語で書かれた書物です。

ユダヤ教の伝統では、

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著者はモーセであった?

とされていますが、実際の作者は分かりません。

ちなみに、モーセについてさらに詳しく知りたい方は、

こちらの記事をご覧ください。

約2,000年前の古文書である『死海文書』と違いはほとんどなく、長期にわたって正確に伝承されてきたと言えます。

サタンが神をそそのかす

あるところにヨブという男性がいました。

ヨブは誠実で真っ直ぐな心を持っており、神を恐れ悪からは離れた人物でした。

ヨブは多くの家畜、奴隷を所有しており、町一番の有力者でした。

神がサタンに言いました。

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お前はヨブを見たか?ヨブほど敬虔な人物はいない

しかし、サタン(地を這うもの)は言いました。

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何をおっしゃいます。ヨブはあなたのおかげで繁栄出来たのだと思っているから敬虔なだけです。ぜひ彼から全ての財産を奪ってみて下さい。きっとヨブはあなたを恨むに違いありません

すると、神はこう言いました。

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ならばお前の思うようにすればいい。その代わり彼の命を奪ってはならない

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分かりました

サタンの思惑通りにヨブは全ての家畜を失い、彼の子どもも失いました。

その知らせを受けたヨブはすぐに地にひれ伏し、ただただ神に祈り、神の愚痴を言うようなことはありませんでした。

サタン、ヨブを追い詰める

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ヨブは財産を失っても、敬虔な気持ちを失わなかった。お前は間違っていた

神はサタンにこう言いましたが、サタンはどこ吹く風です。

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自分の命のためになら人間は財産全てを差し出すものです。つもり人間にとって最も重要なものは命であり、健康です。どうでしょうか?彼の骨と肉を打ってみて下さい。きっとあなたを恨むでしょう

すると、神はこう言いました。

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ならばお前の思うようにすればいい。その代わり彼の命を奪ってはならない

こうしてサタンはヨブの足から頭の頂きまで、悪性のできもので彼を打ちました。

これにはさすがのヨブも弱ってしまいました。

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あなたはこれでも自分の誠実さを守ろうとしているのですか?神を呪って死になさい

と彼の妻はヨブにそう言いました。

しかし、ヨブはこう返します。

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私たちは幸いを神から受けているのだから、災いも受けるべきではないか?

そして、ヨブはただひたすらにその身に降りかかる苦痛を耐えていました。

三人の友人がやってくる

そんなヨブの元に三人の友人がやって来ました。

彼らは一週間、ヨブがとても苦しそうなのを見て最初は誰も話しかけることが出来ませんでした。

しかし、ある日ヨブが口を開きました。

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こんなことがあるなら生まれてこなければ良かった

これをきっかけに三人とヨブは議論に入っていくのです。

三人の友人との激しい議論

この議論が『ヨブ記』のメインテーマであり、内容のほとんどを占めるのですが、とにかく長く分かりにくいのでざっくり言います。

3人の主張はと言いますと、

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ヨブが苦しい目にあっているのは、何か神に背くことをしたからじゃないのか?

一方、ヨブの主張としては、

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私はいつも誠実で悪いことなどしていない

といった主張の堂々巡りです。

議論は白熱して、かなり厳しいことを言ったり言われたりしていますが、結局答えなど出ないのです。

ヨブは紛れもない善人だったにも関わらず、厄災に見舞われ、人々から蔑まれ、友からも激しい非難をくらうという、踏んだり蹴ったりな状況です。

友人三人もちょっとは労わってあげたら良いものの、

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そんな目にあっているのはあなたの敬虔な心が足りないからだ

みたいなことばかり言っていて、

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なんで分かってくれないんだ!

というフラストレーションがヨブにも溜まっていたように見られます。

議論前の簡単なあらすじ

三人の友人をまとめると以下になります。

  1. エリファズ
  2. ビルダド
  3. ツォファル

彼らはヨブを慰めるために、それぞれの国から旅して来たのです。

そして、7日7晩ヨブとともに座っていましたが、

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う、うぅぅぅ…

とヨブが激しい苦痛にあるのを見ると話しかけることも出来ませんでした。

ヨブがこんなひどい目にあうのは、

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実は何か悪いことをしたのではないか?洗いざらい罪を認めたらどうだ

と三人の友人は身に覚えのないヨブと議論をし始めるのです。

三人の友人との議論の傾向

ヨブは三人の友人を一人ずつ対応して、その議論の流れをなんと3回も繰り返します。

この議論の後に、謎の人物エリフの主張があり、最終的に神の応答へと続きます。

最初の議論では、それぞれが礼儀を持って対話を勧めるのですが、2回目では表現が厳しくなり、

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あなたは悪意ある不正を行ったではないか!

と3回目ではついに三人の友人がヨブをそう決めつけ、

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私に敵対して逆らう者こそが、不正とされ罪にされるべきだ!

とヨブもまた言い返し、場の雰囲気は最悪となります。

議論が進んで行くと抽象的な内容から具体的なものとなって行き、三人の友人の説教からヨブは疑問を投げかけ、

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私の主張は本来聞いてもらうことこそが慰めとなるのに…

とも言っています。

三人の友人との議論の内容

サタンの試練に遭ったヨブは苦しみの中で、

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何で私は生まれて来たんだ…。もう、死にたい…

と言うヨブを三人の友人は慰めと共に因果律を説き始めます。

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神は正しい者に祝福を与え、罪を犯した者に災いを与える

と言って、この因果応報の原理を盾にして、

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ヨブよ、元の境遇に戻りたければ、罪を認めて神の信仰にまた戻りなさい

とヨブに言いましたが、ヨブには全く思い当たるふしがなかったのです。

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いや、罪も何も犯してないよ

と三人の友人に冤(えん)罪を主張しました。

もしヨブが罪を認めて

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神様、私を元の境遇に戻して下さい…!

と祈った場合、

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やはり、ヨブは私益のため信仰する者であったか

サタンは勝利することになります。

議論を通してのヨブの疑問

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神はこの世を正しく裁いている。その裁きに疑いを持つ余地はない!

と三人の友人たちは執拗に繰り返し、

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ヨブに何らかの罪があり、神と和解して正しい道を歩むことこそが答えである

と信じて疑わなかったのです。

また、こうも主張します。

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神の前で正しい人間など1人もいない。だからこそ、それぞれの罪の罰を受けるものだ

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それでも、神が認識できない罪まで問われるのは不当だ

とヨブはその主張に反論しました。

ヨブは初めから無垢な信仰を持っていましたが、サタンの試練や友人との議論をきっかけに、

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災いと罰をそんな簡単に考えて良いものか…

と疑問を持ちながら、信仰について深く考えました。

そして、議論を経てから

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自ら償いをする者が存在する。そして、因果応報とは違った世界観も存在する

と述べました。

因果応報だけでは足りない

三人の友人の議論を先導していたエリファズは、ヨブが富んでいたことに対して、

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神の正義によると、本来は貧しい者の所有物を奪っていたせいではないか?

と断言しお互い引けないところまで議論が進みます。

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権力者に生まれ非道に奪い抑圧する者によって、私は貧しく生まれ生きる無垢の人々と共にいるのだ

とヨブは認識するまでに至り、

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因果応報の一般論だけでなく、どこかに結論を出さなければならない

ということを知ります。

そして、さらに三人の友人よりも言葉が増すようになるのです。

この時ヨブは自分の正しさを確信していたので、

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くっ……

と三人の友人はただ黙るしかありませんでした。

その状況に対してエリフが怒るのです。

エリフ(謎の人物)の主張

三人の友人による因果応報による罪の主張に対して、ヨブは自身の正義の下に罪の潔白を主張して、議論は平行線をたどりました。

この時に、エリフという人物はいきなり登場します。

ヨブの罪を示せなかったことに怒りながら、

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ヨブに罪があるかどうかは神が判断することで、議論方法に問題がある。もしヨブの主張を認めると、神の正義は完全ではなくなる。故に、神の倫理が無秩序なものになってしまうではないか!

と主張します。

エリフの主張は神の万能性に倫理の根拠を置いていて、形式的な視点に基づいていますが、

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この人物が、結局何を言いたかったのか?

と理解することは難しいようです。

エリフの主張に、いよいよ神の返答が来て結末を迎えます。

神の答えと物語の結末

最終的には神が嵐の中から現れ、彼ら全員に教えを諭します。

神は三人の友人を非難し、ヨブに再び財産を与えることを約束しました。

こうしてヨブは140歳まで生きたのち、死にました。

しかし、この140歳というのはモーセの120歳を上回っていて、

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神がヨブの寿命を引き延ばしたのだ

と考えられています。

神のヨブへの応答

何もかも言い切ったヨブは、彼の苦難に対する疑問は置いておいて、内なる声に耳を傾けました。

その時、嵐の中から神自身がヨブの前に姿をはっきりと表しました。

そして、神はこう言うのです。

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ヨブは知識が欠如しているが、正しいことを語った

つまり、この答えから因果応報が全てではないことが分かります。

神の逆説的な質問

ここから、神はヨブに戦いとして逆説的な質問をします。

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我が大地を置いた時、お前はどこにいたのか?知っていたというならば、理解していることを言ってみよ

この質問の意味は、

人は神の計画の主人公でもなければ創造に全く関与しておらず、神の活動の目的は人間活動を超越したところにある

ということです。

そして、ヨブはそれを知っていることを示します。

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私は神の無償の行為の世界の中で生きていることを理解して知っている。また、自然現象を見て知っている

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その時お前は既に生まれていて、人生の日数も多いならば我が言うことを知っているはずだ

神は引き下がるヨブに発言を求めます。

しかし、ヨブは己の小ささを認め、神の活動の目的の中心に人間はいないことを理解して退いたのです。

そんなヨブに対して、神はこう続けます。

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我を取るか?己を取るか?お前は我が定めたことを否定して、自分を無罪とするために我を有罪とさえするのか?

神の意図する教訓

この神の逆説的な質問に勝つためには、

  1. 創造物の性格を変え、消滅させなければならない
  2. 創造を否定しなければならない

という矛盾が小さい存在のヨブにはあります。

空想上の動物であるベヘモットレビヤタンという最強の怪物の解釈は様々です。

しかし、それぞれの動物の性質や物語の意義を素直に考えて、

ヨブが遭遇した混沌や災いをもたらす動物も神の創造活動の一部

と理解することも出来ます。

つまり、人間では思い通りにならない災いは全て神の支配下にあるのです。

ヨブは神の計画が成就されつつあることを知り、神に出会えて喜びます。

その一方、自分の神への失礼に気付き塵と灰の上で伏して自分自身を悔い改めました。

ヨブの不満はなくなり、神の正義も災いも全て無償の愛の中で成立していることにも気付き、

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神から幸福をいただいたのだから、不幸もいただこうではないか

とヨブが言った言葉が正しかったと結論付いたのです。

ヨブの物語の結末

物語の最後で、神の怒りは三人の友に向けられます。

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お前たちは我について我の僕(しもべ)ヨブのように正しく語らなかった

さらに、神はこう続けます。

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今回の議論で傷付いたヨブが、お前たちのために祈らなければその罪は清められない

そして、ヨブは彼らのために祈り、その祈りは神に聞き入れられました。

それと同時に、神はヨブの失われた財産を元に戻し、以下のものを持つことになりました。

  • 羊14,000匹
  • らくだ6,000頭
  • 牛1万くびき
  • 雌ろば1,000頭

また、7人の息子と3人の美人な娘をもうけ、ヨブは140歳まで生き長寿を全うして死にました。

と他の預言者たちと比較して、ヨブの年齢は神によって加えられた寿命でもあります。

『ヨブ記』をざっと解説しましたが、分かりづらかった内容も一部あったかもしれません。

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