『コヘレトの言葉』の意味とは?思想を要約してまとめてみた
旧約聖書に描かれる『コレヘトの言葉』はハメシュ・メギロット(五つの巻物)の一つです。
ハメシュ・メギロットとは『コレヘトの言葉』、『雅歌(がか)』、『哀歌(あいか)』、『ルツ記』、『エステル記』の五つの書のことです。
『ルツ記』と『エステル記』についてはどうぞこちらをご覧ください。
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この記事では『コレヘトの言葉』についてご紹介させていただきます!
『コレヘトの言葉』とは
『コレヘトの言葉』は旧約聖書の全文書の中においても、とりわけ名言の宝庫として有名です。
それはコレヘト(作者)を通して、宗教や民族を超えた普遍的な疑問(人生の虚しさや諸行無常などについて)の哲学的な考察が書かれているからです。
そのためキリスト教やユダヤ教を信仰していない異教徒や無宗教者にも大きな違和感を与えることが少なく、比較的なじみやすいとされています。
人間の自由意志について
旧約聖書における一般的な思想として、神は人間に自由意志を与えており、人間が自らの意思で義を選択し行うことを望んでいるとしています。
しかし、全ての人間が義を選択するわけではないので、神は人間のそれぞれの行いに応じて、祝福か罰で報いているのです。
この人間の自由意志について『コレヘトの言葉』では決定論に基づいた世界観が述べられています。
義人も罪人も全員等しく死ぬことなど、この世の全てには定めがあり、その定めは決して変えることは出来ません。
もし誰かが、

俺は不老不死になるぜ!
すべてが予定されているのであれば、自由意志は虚しいと『コレヘトの言葉』では書かれています。

なんだか厭世(えんせい)的ですよね
この厭世的な思想こそが『コレヘトの言葉』の特徴なのです。
これだけでもなんだか他の旧約聖書の書物とは毛色が違うような感じがします。
しかし一方で、『コレヘトの言葉』は人知の及ばない事柄があるというのは人間が何も出来ないということでもあり、何も出来ない人間をありのままの姿で肯定もするという楽観的な側面もあります。
神を畏れる
厭世的なことを描いている『コレヘトの言葉』ですが、神を畏れその戒めを守るべきことを説く箇所も少なくはありません。
以下、例を示します。
神を畏れる人は、畏れるからこそ幸福になり
悪人は神を畏れないから、長生きできず
影のようなもので、決して幸福にはなれない。
— (8:12~8:13)
すべてに耳を傾けて得た結論。
「神を畏れ、その戒めを守れ。」
これこそ、人間のすべて。
— (12:13)
このように『コレヘトの言葉』が語る根本的な世界観は、必ずしも他の聖書との世界観を乱すものではありません。
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『コレヘトの言葉』の作者とは?
『コレヘトの言葉』の冒頭の一文は以下のようになっています。
エルサレムの王、ダビデの子、コヘレトの言葉。
— 1:1
この一文より、ダビデの子どもであり古代イスラエル王国第三代王ソロモンが作者ではないかと保守的な注釈家の中では広く受け入れています。
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伝統的に旧約聖書の中にある『雅歌』、『箴言(しんげん)』、『コレヘトの言葉』の三つがソロモンによって描かれているとされています。
しかし、これらの書物の思想、様式、文体などに多くの違いが認められています。
この違いに関しては

それぞれの書物はソロモンの生涯における異なる三つの時代に書かれたからだ
つまり、
青年時代=『雅歌』(愛の歌)
壮年期=『箴言』(知恵の言葉)
晩年期=『コレヘトの言葉』(この世の全ては虚しい)
と分けられるのです。
しかし、近代における研究により『コレヘトの言葉』はソロモンから数百年も後に書かれたと推定されるようになりました。
なので今では多くの研究者は作者がソロモンではないと考えられているようです。
参考:コヘレトの言葉