モーセは預言者?イスラムにおける『出エジプト記』の 意義
モーセと言えばキリスト教のイメージが強くないでしょうか?
モーセが登場するのは聖書の中でも旧約聖書の『出エジプト記』ですので、ユダヤ教の人にとってもモーセは馴染み深いかもしれません。
旧約聖書の『出エジプト記』のモーセの物語はこちらにて詳しく書いておりますので、よろしければご覧ください。
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旧約聖書に描かれているモーセの人生って一体? なぜ彼は人々と一緒にエジプトを脱しなければならなかったのか、そのストーリーをご紹介!
しかし、実はイスラム教にとってもモーセは重要な人物なのです。
一体どういうことなのか?
分かりやすく解説していけたらと思います。
クルアーン(コーラン)に登場するモーセ
イスラム教の聖典であるクルアーン(コーラン)の名前くらいは聞いたことがある人もいらっしゃるのではないでしょうか。
実はこのクルアーンにもモーセは登場しています。
モーセはクルアーンの中ではアラビア語でムーサーと表記されています。
ムーサーは非常に多くの箇所で言及されており、特に第28章は全編がムーサーの物語となっています。
クルアーンにおけるムーサーはエジプトで生まれ育ち、のちに「聖なる谷」にて神の声を聞いたとされています。
そして、エジプトのファラオに唯一なる神を信仰するよう求め、神の偉大さを伝えるために杖を蛇に変える奇蹟を行います。
しかし、ファラオに拒絶されてしまい、イスラエルの民を連れてエジプトを離れるというストーリーのようです。
この出エジプト物語は基本的には旧約聖書の『出エジプト記』と同じで、シナイ山(アラビア語ではムーサ―山と呼ばれています)でユダヤ教徒に対して神よりトーラー(律法)を授かったとされています。
このトーラーこそ十戒のことですね。
モーセの十戒に関する記事も別で作っていますのでどうぞご覧ください。
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クルアーンで描かれるムーサーの物語も旧約聖書の『出エジプト記』と同様、モーセが人々を率いてエジプトを脱出したというところは全く同じのようです。
預言者としてのムーサー
旧約聖書のモーセも、クルアーンに登場するモーサーも神の声を聞く預言者であるというところは全く同じです。
しかし、イスラム教におけるムーサーはムハンマドを除く様々な預言者の中では最も偉大な預言者であると見なされていて、ムーサーを別名「神と語る者(カリームッラーフ)」と言ったりしています。
ムーサーはイスラム教における五大預言者の一人として数えられています。
イスラム教の五大預言者とは
- ノア(ヌーフ)
- アブラハム(イブラーヒーム)
- モーセ(ムーサー)
- イエス(イーサー)
- ムハンマド
の五人です。
しかし、そんな偉大な預言者ムーサーですが、ユダヤ教徒たちが彼の言うことを聞かずに偶像崇拝していたとクルアーンでは描かれています。
神に選ばれた預言者ムーサーに従わないユダヤ教徒への批判的な言及が、歴史的なムスリムのユダヤ教徒に対する敵意の要因の一つになっていると指摘されています。
知的探求を行うムーサ―
旧約聖書には描かれていないムーサー(モーセ)の特徴として、知的探求心が強かったというのがあります。
クルアーンには知識を求めるムーサーが、従者を引き連れて賢者に会いに行って教えを請うという物語があります。
エジプト脱出からムーサーが死ぬまでの間に知的追及の旅もしていたみたいです。
クルアーンと旧約聖書の共通点
まず大きいのはクルアーン、旧約聖書共にムーサー(モーセ)は偉大な神の預言者であったということ。
そして、イスラエルの民を引き連れてエジプトから脱出をはかったということ。
この二点は間違いないと思います。
そして、なぜこんなにもイスラエルの民がエジプトから脱出するということが二つの聖典でこんなにも大きく描かれているのか。
これは私の予想になりますが、おそらくエジプトが多神教を信仰していたからだと思います。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三つはそれぞれ聖典とする教えに違いはあれど、共通しているのは唯一神であるということ。
唯一神を信仰している民族(イスラエルの民)が多神教を信仰している民族(エジプト)と袂を分かつということはそれぞれの教えにとって充分な意義があったのではないかと思います。
参考:モーセ