ギルガメシュのラストとは?【死後のギルガメシュ編】
ギルガメシュ叙事詩において英雄的存在となっているギルガメシュ。
そんなギルガメシュの死後はどうなっているのか?
様々な伝承を元に覗いてみましょう!
ギルガメシュの死後は描かれていない
まず抑えておきたいのはギルガメシュ叙事詩はギルガメシュの死について書かれていません。
ギルガメシュ叙事詩についてはこちらの記事にてあらすじを載せていますので、よろしければご覧ください。
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ざっくりご説明するとギルガメシュ叙事詩とはギルガメシュの親友であるエンキドゥの死後、ギルガメシュが永遠の命を求め旅に出て、結局見つからず帰ってくるまでの物語です。
なので、ギルガメシュ叙事詩の中ではギルガメシュが死んだとするような明確な表記はありません。
冥界の神としてのギルガメシュ
ギルガメシュ叙事詩の中では描かれていない彼の死後ですが、シュメールの伝承等にて彼の死後の姿が描かれています。
その中でギルガメシュは死後、冥界の神になっているというのが特徴的です。
しかし、位の高い神として描かれているのではなく、どちらかというと人々がより近寄りやすい神であったとされています。
『ウンナンム王の死と冥界下り』ではエレシュキガル、ネルガル神らと共に神の一人として名を連ねています。
ちなみに、エレシュキガルは『イナンナの冥界下り』にも登場する冥界の女神で有名です。『イナンナの冥界下り』についての記事もありますので、合わせてどうぞご覧ください。
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他にもある書版には冥界神ギルガメシュの存在と彼に捧げられた祈祷の記録が鮮明に残っています。
ギルガメシュとアブ祭り
古代メソポタミアではアブの月というものがあり、それは今でいう7月から8月がそれに当たるそうです。
そしてアブの月になると死者を供養する祭典「アブ祭」が行われ、その祭礼の時に、なんとギルガメシュの像が使われていたそうです。
ギルガメシュ像に人々が供物を捧げたり、定期的に造り直して整えられていて、人々が死してなおギルガメシュを崇拝していたことが分かります。
エンネギという街の主神であるギルガメシュ
ギルガメシュといえばウルクという都市の王として登場していますが(ギルガメシュ叙事詩ではウルクの暴君として当初ギルガメシュは描かれていました)冥界神ギルガメシュはウルクではなく、なぜかエンネギという都市の主神であったとされます。

このウルクとウルという都市の中間地点にあるのがエンネギです。
どうしてエンネギなのかという議論は様々あるようですが、「エンネギには死者への供物が届けられる管がある」と信じられていたとも言われています。
また、ウルクの近隣に位置するウルという都市では、王たちの間で「ギルガメシュは兄弟」と言われ、ギルガメシュのフンババ征伐を伝えるなど偉大なる祖先として敬っていたようです。
ちなみに、フンババ討伐などギルガメシュと彼の親友エンキドゥとの冒険物語をご紹介している記事はこちらです。
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英雄や神としてのギルガメシュ
ギルガメシュ叙事詩では当初暴君として君臨していたギルガメシュが親友であるエンキドゥと出会ったことにより、人間らしさを取り戻し「死」について悩んでいく姿が描かれています。
そんな彼が死後、冥界の神として人々の間に広まり、信仰を得ているというのがギルガメシュらしいというか、どこまでも人間の側に立っているように感じました。
人間として生きていたギルガメシュは英雄として人々を救い、死後の冥界神としてのギルガメシュは死んだ人々をまた救っているというところが、なんだか業が深いように思います。
参考:ギルガメシュ